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狼と香辛料xベルセルククロスオーバー小説、ガッツ「お前に鉄塊をぶちこんでやる」ホロ「!?」 その7

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狼と香辛料ベルセルクのクロスオーバー小説です。

狼と香辛料ほんわか御伽話風の雰囲気を、ベルセルクのグロさが多少壊してしまう感じになっていますが、それでも良いって方、興味が湧いた方は是非是非読んで下さいませ。

・前回のあらすじ

ホロを狙う黒の剣士から逃げていたロレンスたちだったが、何かと足を引っ張るルナを怪しみ、切り捨てて逃げようとしたが、その逃げた先に、置いていったハズのルナが現れ困惑する。

そしてルナは自身の事を化身狩りをする者と称し、ルナもホロを狙っていると言う、しかも数年前に行方不明になったロレンスの師匠だったフォルクスも、ルナに殺され、さらにその原因が自分にもあった事に絶句する。

そんな信じがたい事が連発する状況の中、黒の剣士にも追いつかれてしまいロレンスたちは絶体絶命の状況に陥ってしまう。

 

【第7章 対峙】

 

―――で、どっちからやるんかや?
とホロは自信ありげな不敵な眼差しを向け黒の剣士とルナ、交互にそう告げる。
言ったからといって一人ずつ戦ってくれる保証などない。
そんな事は戦いの素人であるロレンスでも分かった。
当然、ホロもそれはわかっているハズで、それをあえて言うのは余裕の現れなのか、はたまたその逆なのか。
心情的には前者と願いたいところだが、ここに来るまでにホロが吐露した己が胸中、黒の剣士の圧倒的強さに対する不安、それから考えると後者の可能性が高いだろう。
ホロは二人同時には勝てないと理解しているのだ。
それは当たり前だろう。
二人はホロが巨大な狼の化身に戻っても倒せる力を持っているのだ。
ルナに関しては、本当かはまだわからないがホロのような巨体な動物の化身を狩回れる力を持ってるらしく、同じく黒の剣士も、見てきた全てが想像を容易くさせる。
ホロを殺せる術、その想像を。
二人はホロを殺せる事が出来るのだ。
また黒の剣士とルナ、この二人が仲間であるかどうかは不確実であるが、ルナが黒の剣士を追い付かせるためにやった、足を引っ張る行為を見れば仲間である可能性は高い。
それを考えれば分かれて戦う事はあり得ない。
そんな相手に『どっちからやるか?』などと聞く行為は、逆を返せば自分には二人は相手には出来ないと明言しているような物。
ホロがそれに気づかないハズもなく、それでもあえて聞くのは、一縷の望みにかけた切望の現れなのか?
ロレンスはいけないと思いながらも、不安が先走り、良くない考えが溢れだすのを止める事が出来なくなっていた。
ホロが倒される、愛する者が殺される。
二人がかりで卑怯にズタズタに。
数分先にあるかも知れない惨劇の未来。
そんな胸を鷲掴みにされて締め付けらるような不安がロレンスを襲っていた。
―――しかし。
だがしかしロレンスの不安をよそに、その言葉を聞いたルナは、一瞬の沈黙の後、嫌らしい笑みを浮かべながらあっさりと身を引くように後ずさった。
何故? そう考えるよりも安堵が胸の内に広がりほっと溜め息を吐き出させる。
それにロレンスは、はっと言った感じに安堵して先を考えない、思考が停止している事に気づき戒める。
こと戦いに関しては、もはやロレンスの出る幕はないかもしれないが、考えを巡らせていればホロの役に立つ事も思い浮かぶかもしれない。
だから考えるのやめてはいけない。
商人の戦いは考える事なのだから。
そうロレンスは改めて念頭すると、再び対峙するホロと黒の剣士に視線を戻す。
そして後ろに下がったルナの行動を、了承と取ったホロは黒の剣士だけに視線を傾ける。
そして変身するためか、ぐっと上着の裾に手をかけ服を脱ごうとした。
そのホロの行動にロレンスは、内心慌てつつも冷静な口調で止める。
「ホロそのまま狼になっても構わない。目を離す方が危険だ」
「いいのか? この服は主が大枚はたいて揃えた物じゃなかったのかや?」
「こういう時の為にもう一組替えは買っておいた…気にするな」
ホロ「そうか、ふふ主にしては気前がいいの」
ホロはこちらを向かないが、機嫌が良さそうな口調で言葉を返す。
だからロレンスも。
「ああ、だから絶対勝てよ」
と、ニヤリと口端を上げ、いつものやり取りをしてるように返した。
「任しておけ!」
そのやり取りが良かったのか、ホロは、いつもの気宇壮大で自信に満ちあふれた頼れるホロになっていた。
そしてホロはそのままの勢いで、麦袋から麦を取り出し口に含むと、バリバリバリと服を引き裂き、ぎゅおおおと一瞬で巨大な狼の化身へと変貌する。
それを目の辺りにしてもさすが黒の剣士か、驚きもせず、それどころか巨剣の切っ先をホロに向け静かに構えていた。
そんな事は当たり前のように―――
そしてその構えは、素人のロレンスが見ても、黒の剣士の強さがビリビリと伝わってきそうな堂の入った見事な構えだった。
対してホロの方は狼らしくグルルと唸り声を出しながら、攻めるタイミイングを図るように黒の剣士の回りを歩いていた。
ドスドスと重さから来る足音をたてながら。
すでに戦いが始まっている事を理解したロレンスは、巨大なホロの戦いは広い範囲に及ぶ物だろうと考慮してコルを促しながら大きく二人から遠ざかる。
ロレンスはその際、二人から目を離さぬようにと後ろ向きで歩いていると、ずぼっと片足を大きく沈ましてしまう。
ロレンスは慌てて足元を見ると、そこには泥沼があり、さらによく見てみるとロレンス達が下がろうとしたその先は、ぽつぽつと草が生えているから分かりにくいが、どうやら泥沼が広がっているようだ。
しかも沈んだ先がずずずと沈む
「うお!」
ロレンスは慌ててもう片方の足に力を入れ引き抜こうとする。
まだ浅い位置だったのか、それとも早めに行動したのが良かったのか、運良くすぐに足を引き抜く事が出来安堵からほっと溜め息を漏らす。
「ロレンスさん?」
その行動をおかしく思ったコルが訝しげにロレンスを見つめてくるので「たぶん底無し沼だ」と指をさし簡潔に説明すると、コルはロレンスが示した方向を見て「え…? あ…ああ」と驚きながらも納得する。
そんなやり取りをしていると、しいぃぃぃぃと音が聞こえてくるのを感じた。
その音を行方を探すように視線をゆらゆら向けると、そこには黒の剣士がおり、剣士は力をためるように、ぎりぎりと噛み締めた歯の隙間から息を吐き出していた。
そして次の瞬間、ドン! と黒の剣士がいた場所の土が巻き上がると、黒の剣士は爆発するように飛び出していた。
土が巻き上がったのは、巨剣とその他もろもろの黒の剣士の装備の総重量から来るとてつもない重さからなのであろう。
しかし驚くべきは、そんな装備をしてもあの速さ。
黒の剣士はロレンスが目で追うのがやっとの速さであっという間にホロを巨剣の間合いの距離まで詰め寄る。
一体どんな訓練をすればあんな事が出来る力、筋力が得られるのか?
しかしそれを深考する前に、絶望的な光景を目の辺りにして、再びロレンスの思考を停止させる。
気がついた時には、あの恐ろしい巨剣が今にもホロを真っ二つしようと、大きく大上段に振り上げられていた。
―――ホロ…っ!
ロレンスはそんな恐ろしい光景を見たくなくて、ぎゅっと固く目をつぶる。
するとその瞬間、ばちゃばちゃと何か液体が顔を叩くのを感じた。
ロレンスはすぐにそれがホロの血だと感じるのは瞬時の事だった。
沸き上がる絶望から震える手つきで顔についたそれを触る。
ぬる―――っとはしてなく、それはサラサラした液体だった。
血にしては滑り気がない液体である事におかしく感じたロレンスは確かめるべく、恐る恐る目を開ける。
視界に出てきた指についた液体は色はなく、無色透明―――水だった。
次に視界を二人に移動させると、大上段を降り下ろした黒の剣士がそこにおり、巨剣が叩きつけた場所が爆発したように、土ごと巻き上げられた草々が舞っていた。
どうやら顔に飛んできた水は、先程の雨で貯まった葉の雫が巨剣の威力により吹き飛ばされてきた物みたいだ。
ホロの血じゃない、その事実に一応の安堵を覚えるもすぐに不安が胸中を駆け巡る。
ホロの…姿がない?
見た先には黒の剣士しかおらず、ホロの姿はなかった。
ホロが殺られてないのは良かったが、一体どこに行ったのか?
左に右に視線を動かすがホロの姿はどこに見えなかった。
いくら狼とは言え、あの巨体を隠す事なんてそうそう出来るハズもない。
本当に一体どこへ…そんな事を考えながら黒の剣士に視線を戻すと黒の剣士は上を向いていた。
ロレンスも同じように上に視線を向けると、ばばばと風鳴りを鳴らしながら巨大な影が月明かりを背に黒の剣士めがけて降ってきていた。
その影がホロしかない事は分かっていたが、圧迫すら感じるその迫ってくる巨体に、ロレンスは畏怖を感じ、ゴクリと喉を鳴らす。
鳴らした次の瞬間、ズゥンと重々しい地響きを鳴らしホロは黒の剣士にのし掛かった。
さすがの黒の剣士も、空中から急降下して威力を増した巨体の重さに、耐える瞬間もなく、べチャリと言った感じに本当にあっさりと踏み潰された。
決まった―――ロレンスは心中でそう思ったが、ホロはさらにそこから踏み潰したそこを支点とし四肢に力を込めると、またズゥンと重々しい音を鳴らし後方へと飛び退った。
その際、力の支点にされた黒の剣士も、その反動からかバィンと体を跳ね上がらせる。
確実に死んだ―――ロレンスは一瞬そう思った。
当然である。
いかな強靭な鎧を着込もうとあれを食らってただで済む人間などいない。
しかし同時に違和感も感じていた。
あんな巨体に踏み潰されても黒の剣士の体は五体満足のままだったからだ。
あれだけの質量に踏み潰されれば、腕の一本や二本、千切れ飛んでてもおかしくないのに。
そして感じた違和感は現実の物となりロレンスを驚愕させる。
ホロが踏み潰した場所からむくりと影が一つ起き上がる。
黒の剣士が立ち上がったのだ。
ヨロヨロとはではあったが、確かに現実に―――立ち上がったのである。
―――人間じゃない。
元より人間である根拠はなかったが、人間のまま戦っていた黒の剣士をロレンスは少なからず人だと考え見ていた。
しかしその考えははっきり間違いであったと認識させられた。
巨大な大岩のごときホロの巨体、それを空から受け止めてなお立つ人間がいると言うのだろうか。
黒の剣士は人間じゃない。
見た目はロレンスと同じ人間でも、あの体は吸血鬼のようなまたは狼男のような、化物じみた強靭で恐ろしい力を持つ不死身の肉体なのかも知れない。
そうロレンス想像してしまうには充分の事が目の前で現実に起こった。
その想像がロレンスの思考の中で、ホロが持つ、巨大であるがゆえの優位性をあっさりと覆し、ホロが勝てるビジョンに闇を落とした。
ホロもそうなのか、あの後方に飛び退った後は距離を取ったまま攻めあぐねていた。
それもそのハズである、相手はそこらの傭兵とは違って、当たれば一撃必死の巨剣を持つ黒の剣士。
一つ間違えればこちらが死ぬのだ。
慎重になって然るべくであろう。
しかしこちらの憂慮は気にもせず、いやむしろ好機と捉えたか、先には打って出たのは黒の剣士の方だった。
がちゃりと音を立て、恐らくは義手と思われる鉄の腕をホロに向ける。
その行動が何を意味するのか、ロレンスにはわからなかった。
ホロも同じくとわからないと言った感じに、目を細め、ぐるると唸りながら黒の剣士の動向を伺っていた。
だがロレンスは暗い中ながらも黒の剣士の義手を注視し、そして気づく。
小手の辺りについた半月状のオブジェクトに。
「ホロ避けろ! 弓…!」
だ! と言葉を続ける前にシュバババと連続で義手から矢が放たれた。
咄嗟にホロの方を向くがすでにそこには姿はなく、回避するために大きく横に飛んでいた。
さすがホロだ…ロレンスは安堵と共にそう思ったが、しかし次に目に入った光景がそれをあっさりと瓦解させた。
義手から放たれている矢は止まる事なくホロの逃げた軌道を追いかけ…そして捉える。
「う…!」
ホロの狼化した時の特殊な声と共にドドド! と肉に突き刺さる音が連続で聞こえる。
見ればホロの後ろ足に数本矢が突き立てられていた。
「ひっ……!」
「……!」
コルはそれに小さな悲鳴を上げ、ロレンスはその光景に絶句した。
ホロが狼化して戦った荒事は何度かあったが、ホロが傷つくのは初めての事だったからだ。
いや、自分が愛する者を傷つけられて冷静でいられる者などいない。
ロレンスは無意識に腰の帯刀していた銀のナイフを抜くと「うおおおお!!!」と絶叫に近い閧の声を上げて黒の剣士に向かっていった。
「い、いかん…主よ!」
ホロは矢が刺さった足をよろめかせながらも、何とか踏ん張りそう叫ぶがロレンスは止まらなかった。
止まるどころかそのホロの痛々しい姿を見て、さらに己が内の怒りの炎を燃え上がらせ、地面を踏みしめる足に力を込めた。
しかし。
黒の剣士はそんなロレンスの思いなどまるで気にもせず、手負いの狼を仕止めるべくホロに向かって駆け出し始める。
当然ロレンスはそんな黒の剣士の行動を止めるべく後を追う。
例えあの剣で真っ二つにされても構わない。
絶対に止めるんだ。
その頑然たる強い意思を持ってロレンスは黒の剣士の後を追った。
だが。
追い付かない。
追い付く事が出来なかった。
黒の剣士の速度はロレンス遥かに凌駕したスピードでホロに迫っていた。
なぜあんな巨剣を担いでそんな速さで走れるのか。
なぜ自分はこんな小さなナイフしか持ってないのに追い付けないのか?
商人だからか?
戦士なら倒せないまでも追い付く事は出来たんじゃないだろうか?
ロレンスは自分が商人である事に激しい後悔を覚えていた。
どんどん小さくなっていく黒の剣士の背中を見ると、自分がとても惨めな存在に思え、悔しさから涙を滲ませた。
このままではルナに殺された師匠と同じく、ホロまでもが殺されてしまう。
ホロだけは、ホロだけは絶対に失いたくない。
そうロレンスが思っても現実は無慈悲に冷酷にやってくる。
ホロを間合いに捉えた黒の剣士は巨剣を振り上げる。
ホロを叩き斬るために。
「ホロォ…!」
嗚咽に近い形でロレンスはホロの名を呼ぶと、遠くにうつるホロに手を伸ばし、触れようと必死に手を空中に彷徨わせる。
だがそんな努力も虚しく黒の剣士は巨剣を降り下ろされる。
「やめてくれええええええ!!!」
ロレンスがそう絶叫し、巨剣がホロに当たる。
当たったと思った。
そう思った時にはすでに黒の剣士はそこには居なかった。
あるのは眼前にいきなり現れた、少し黒ずんだ焦げ茶色の毛皮で覆われた巨大な腕。
そう認識した直後にバキバキバキとつき出された腕の方向から、恐らくは木々がへし折れる音がした。
すぐには理解できなかったがロレンスは少し逡巡して、それがこの腕に突き飛ばされた黒の剣士が森の方に吹っ飛ばされた音だと分かった。
そしてロレンスは恐る恐るつき出された巨大な腕の主の方へと視線を向けると、その先には、器用に腕だけ変化させたルナがあの嫌らしい笑みを浮かべながらこちらを見ていた。
この腕だけ変化させるのは、初めてホロに会った時もやっていた芸当だったので、驚きも頬をつうっと流れた汗一筋の少量の物。
やはりルナは何かの動物の化身だったのだ。
そうロレンスが考えているとルナはロレンスの考えを読んだかの如く口を開く。
「あ、ロレンスさん、今私の事ホロさんと同じ動物の化身だと思ったでしょう? 残念だけど違うんですよねぇ…」
ルナはニタニタと下卑た笑みを浮かべながらそう言う。
「違う? だったら何だと言うんですか?」
「私がですか? 嫌だなぁ人間ですよ人間」
「…ふざけてるんですか?」
これだけの事を目の辺りにさせて何を言ってるんだこいつは…そんな怒気を孕んだ口調でロレンスは言う。
だが相変わらずルナはそんな事はまるで気にせず飄々とした態度でロレンスに返答する。
「まあと言っても私は人間を超越した者ですからロレンスから見たら人間ではないかも知れませんね、あは」
「人間を…超越…?」
ロレンスはその言葉を訝しげに咀嚼し考えるが、ルナは長考しているロレンスにお構いなしに話を続けていく。
「いやあ、そこら中で使徒を切りまくってる黒の剣士の噂は聞いていたので、どれ程の強さなのか、ホロさんをぶつけて見極めようと思ったら、そんな大した事ない奴でほっとしましたよ」
…大した事がない? あれが?
「やはりただの人間、贄でしかありませんよね…一体どうして他の奴らはあんなのに殺されてしまったのか…理解に苦しみますね」
黒の剣士がただの人間? 贄…?
ロレンスには理解しがたい言葉が出てきて、よりロレンスを困惑させる。
「…お前は一体何がしたいんだ?」
黒の剣士に追い付かせたり、助けたり、何をしたいのかルナの意図がまったく分からない。
「何を…したいかですって?」
そのロレンスの問いにルナは、なんでそんな事も分からないのかと言った風な、呆気に取られた口調で問い返す。
自分にしか分からない事ばかり言っておいて何を言ってるのかこの男は。
そんなルナの態度にイラつきを覚えながらも、何とか堪え冷静に言葉を続ける。
「当然でしょう黒の剣士に追い付かれるようにしたと思えば助けたり貴方は一体何をしたいんだ? まさかこのまま見逃してくれたりもしてくれるんですか?」
最後の方はニヤリと不敵な笑顔を浮かべながら尋ねる。
するとルナは、あの嫌らしい笑みをピタリと止め、腕を引く動作をする。
すると、びゅるるおおお! と風を切る音を出しながら一瞬でルナの腕が元の人間に戻る。
「うお!」
真横でいきなりそれをやられたロレンスはさすがに驚いて尻餅をついてしまう。
「ふん…ロレンスさん勘違いしないでくださいよ? 貴方はホロさんを見てこちら側に立っているような気になってるつもりでしょうが、貴方は知ってるだけで何の力もない…調子に乗らない方が身のためですよ」
「く…」
震えんばかりの悔しい思いが胸中に溢れるが、事実そうなのでロレンスは歯噛みするしか出来なかった。
その顔を見て満足したのか、ルナは見下しながらふふん、と鼻息を鳴らし話を続ける。
「私がホロさんを見逃す訳ないでしょう。あくまで私は化身狩り、ホロさんを狩るのが目的なんですから…黒の剣士を倒したのは獲物を奪われたくなかった…それだけですよ」
ふぉふぉふぉ、とまたいつもの下卑た笑みを浮かべながらルナは満足気に語る。
「お前は、なぜわっちらを狙うのかや?」
今まで沈黙を守っていたホロが突如ルナにそう質問を投げ掛けた。
ホロの声とは言え、突然横から発せられた巨大な狼の震えるような大きな声に、ロレンスは驚きホロ方へと顔を向ける。
ルナも意表を突かれたのか、しばしキョトンとした顔でホロを見る。
しかしすぐに満足そうな顔をすると、両手を大仰に開き、ロレンスたちに言う。
「良いでしょう、どうせその体では逃げる事も戦う事も出来ないでしょうから、死ぬ前の手向けとしてお教えしましょう。私がなぜ人間をやめて化身狩りをしてるのか…それをお教えするにはまず私の生い立ちから話さなければいけませんね…」

 

続く

 

・次回

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