こんにちわどうも、てんたまです。
今回のお話は、僕が小さかった頃、ジャングルの奥地にいそうな、猛毒の蛇に出会ってしまった時の話をしようかと思います。
とりあえず最初に言っておきますが、これはアマゾンとかアフリカに住んでいたと言う話では無く、また毒蛇がいる動物園に行って見たと言う話でもない。
正真正銘毒蛇とは無縁の、日本の普通の住宅街がある場所での出来事です。
何故そんな場所に、猛毒の蛇がと言うところですが、それは後々語って行こうかと思います。
話は幼稚園くらいの小さい頃、僕は家の事情で、朝霞にあった祖母の家に住んでいた。
祖母の家の周りは、一軒家から大きな庭付きの家、ボロいアパート、ちょっと綺麗目なマンション、何かの職場の建物、そんな建物たちがギュウギュウに詰まった感じの住宅街で、
そこに住んでいた時の事を思い出そうとすると、脳裏に浮かぶのは、夏の日差しがギラギラと照っている中、そのギュウギュウ詰まっている住宅街の裏の細道、さらには家の壁の塀伝いなどを、縦横無尽に駆け巡って遊んでいた記憶が思い起こされる。
何故その記憶が浮かぶと言うと、住宅街の建物の一つに、ボロいアパートがあるのですが、そのアパートの裏手には、舗装がされていない、泥の畦道のような裏道があり、僕が遊びで駆け回っている時にそこをよく通っていたのですが、
そこを通ると、アパートに住んでいた名前も知らないおばさんが、必ず窓を開けて出てきて、嬉しそうな笑顔で、キンキンに冷えたチューチューペットのアイスやお菓子をくれた。
それを、一緒に遊んでいた、もう名前も思い出せない同年代の近所の友達と食べていたのだが、その時の記憶は今思い出しても、とても楽しい物であったと感じられる。
美味しいお菓子を貰った、楽しい楽しい思い出。
人は楽しい思い出は忘れない。
だから昔の事を思いだすと、真っ先にその事を思いだすのかと思う。
そんな楽しい幼少時代、あるテレビ番組がとても流行っていたのも、記憶に深く残る出来事の一つだった。
それは何という番組かと言うと、「川口浩探検隊」と言う、幻の巨大魚や地底人を探しに行く、いわゆる探検物バラエティー番組だ。
内容はもちろんほぼやらせで、巨大魚は良く覚えていないが、地底人は引っ張るだけ引っ張って結局何も出ないと言う、そう「何も出ない」と言うオチで終わるのが定番の、今の時代なら、すぐにでも小難しい倫理観を問われて叩かれそうな、そんなやらせ番組だったような気がする。
昭和の緩い時代だから許された番組、それが川口浩探検隊だったと思いましたが、
とりあえず、まあ、そんな、やらせの件はさておき。
その番組は、演出の一つに、ジャングルの奥地にきているんだぞ、と言う緊迫感を与える為か、良く猛毒の蛇がっ! と言うセリフと共に、緑色の蛇みたいなのを映していました。
子供の頃の記憶だから、定かでは無いけど、確かそんな演出が良くあったと思う。
そして子供ながら、そんな演出を何度も見たせいか、自分の中で、緑色の蛇は毒蛇になってたんですよね。
そんなある日の事です。
通っていた保育園から、祖母の家に帰る途中の事でした。
その日は雨が降っていて、雨どいから落ちてくる雨水が、ぶしゃー、と流れ出るくらい、結構降りが強い雨の日の事でした。
僕はその雨道を、いつも遊んでいるギュウギュウ詰めの住宅街の細道を、一人歩いていたのですが、
祖母の家の近く、あのチューチューペットのアイスをくれるおばさんのアパートを通りかかった時、ふとアパートの裏手の泥道に目を向けると、ある物が目に入りました。
それは長細い紐状の物体で、色は、はっとするような鮮やかな緑色、それが波のようにウネウネしながら移動していくのが見えたんですよ。
僕は、最初あれはなんだろう? と不思議に感じながら見てたのですが、すぐにそれが、テレビに出ていた、あの緑の毒蛇だと感じました。
僕はその蛇を見て最初に思った事は「噛まれて死ぬ!」でした。
そう散々テレビで言ってたのを見た所為か、とても強い恐怖を感じ、身が竦んで動けなくなってしまったのです。
そんな感じに硬直してしまったのですが、何故かウネウネしながら移動する蛇から目は離せず、しばらくじっと凝視するように見てました。
そうしていると、そのうち緑色の蛇は、道の奥にある家の方へと消えて行きました。
蛇の姿が消えると、安堵した事からか体の硬直も解け、僕はすぐ、逃げ帰るように祖母の家に帰り、
帰宅後、祖母に、毒蛇が近所の家に入っていった事を言おうと思いましたが、
僕は子供の頃、結構イタズラっ子で、祖母に良く怒られる事ばかりしていた事から、普段から、自分の言う事はあまり信じて貰えないと分かっていたので、「言ってもどうせ信用してもらえない」と思い、毒蛇の事は祖母に言うのは止めておきました。
その後、僕はしばらく、あの毒蛇が入った家の人が死んじゃったらどうしようとか、毒蛇が僕の家に来ちゃったらどうしようなど、恐怖を感じる毎日を過ごしていましたが、
とりわけ、そんな近所で人が死ぬような大事件も起こらず、日が経つごとに、自然と毒蛇の事は僕の頭の中から薄れて行ったのです。
それから月日はたち、数十年後、大人になった僕は、何がきっかけか忘れましたが、ふとあの日見た毒蛇の事を思い出しました。
あの時見た毒蛇は───一体何だったんだろう? と。
僕は長年謎に感じていた疑問にすぐ答えを出す事が出来ました。
何故子供の頃に分からなかった事にすぐ答えを出せたのか、
それは昔と違って、僕が大人になったからです。
大人なった僕は、子供の頃と違って様々な知識を得ている。
そしてその知識から導き出された、僕が幼い頃見た、ジャングルの奥地に住んでいそうな緑色のヘビの正体。
数十年後に導き出された頭の中に浮かんだ答えを、僕はつい間の抜けた声で呟いてしまいました。
ああ、ありゃただの青大将だよ。
まあ、と言う感じに、今思えば、たぶんただの青大将だったんでしょうね。
ちなみに青大将とは日本に普通に住んでいる無毒の蛇で。
テレビで見た、ジャングルに住んでいそうな毒蛇に比べると、そこまで鮮やかな緑ではありませんが、これも緑色に近い色をしているので、幼く、そしてヘビの知識もテレビしかなかった僕が、その毒蛇と間違えってしまってもしょうがない話ですよね。
とは言え、本当にただの青大将だったかと言われると、子供の頃の記憶なんで定かでは無いですし、
もしかしたら、近所で飼われていた本物の毒蛇だったと言う話も、なきにしもあらずですが、
しかしそれ以外に、その蛇の正体にちょっと思うところがありました。
それはその蛇が、今思えばちょっと不思議な感じもしたんですよね。
どんな感じと言うと、霊的な物みたいな、そんな感じです。
上でも言いましたが、蛇が家の中に入って消えるまで、体が硬直したって言ったじゃないですか?
あれはテレビで刷り込まれた恐怖からだったかも知れませんが、もしかしたら、その蛇は神様とか、そう言った霊的な物だったから、金縛りになってしまった、と言う話だったかも知れませんよね。
まあちょっとバカバカしい話しではありますが、
でも家の中に入って消えていく蛇の神様って話も良く聞くし、もしかしたらあれは、そう言った物だったのかもしれませんよね。
まあ、ともあれ、あれが青大将だったのか、もしくはジャングルの毒蛇だったのか、はたまた蛇の神様だったのか、実際のところ僕にも良く分からない。
だからこの話の最後はこう締めくくろうと思います。
それでは、また!